長尾 我々もまさに「地元の若者が残りたくなる大学づくり」を目指しているところです。具体的な対策として、まず、オープンキャンパスは非常に有効です。全ての学部で定期的に実施しており、どのような教育?研究をしているかを、高校生に具体的に示す機会となります。幸町のオープンキャンパスには2,000~3,000人が集まり、その内7~8割が受験してくれます。
さらに、大学から外に出て、出前授業や実験も行っています。
また、新しい学部?学科の創設についても検討を進めています。県からのご要望を踏まえながら、文化芸術、観光ツーリズム、建築デザインなどの学部?学科を新設できないか、ワ-キンググループを立ち上げ検討中です。学部?学科の創設には、どういう人材を養成するのかを明確化することが必要だと考えます。しっかりと精査して1年以内には方向性を定め、平成30年度の設置を目指しております。
一方、県の肝いりで、香川県の大学?短期大学全てが参加してコンソーシアムをつくり、話し合う場を設けています。
大学入試の際、各々の大学情報とともにその大学がある地方の幅広い情報を、全国どこにいても知ることのできる枠組みがあればとも思います。大学の情報はみなさん集めると思うのですが、例えばその地域には、こんな面白い企業があるなどの情報にも同時に触れられればいいのではないでしょうか。インターネットの普及で改善はされましたが、現状ではかなり積極的に取りに行かないと触れられません。
また、県外に出てしまった学生にもUターンしてほしいと思っていますが、その時に大事なのが、Uターンしてきた学生を受け入れる企業があるのか、というところです。これは、香川の企業の責任とも感じました。
長尾 本学の県内出身者はここ20年ほど25~30%です。また卒業後は県外で就職するという大きな流れがあります。この流れを変えるには、大学のブランド化、魅力化が必要です。香川大学で学べること、育成される人間像、もっと言えば香川に留まりキャリアアップしていく人生設計までを発信すべきだと考えております。
平成25年度に、本学は文部科学省の「地(知)の拠点整備事業」(大学COC(センターオブコミュニティー)事業)に採択され、学生と教員がともに地域に出て、人口減少、シャッター商店街、産業振興などの課題について、住民の方々と一緒に解決策を探る取り組みをしています。
さらに、最近、「地(知)の拠点大学による地方創生推進事業(COC+)」に採択されました。本学学生の県内就職率が30~40%であるのを、この5年間で10%増やすというプロジェクトです。まずは経済同友会や、商工会議所に、私がお話しに行くところから取り組みをスタートいたします。
藤岡 香川大学には興味深い研究もたくさんあります。学部?学科の新設を検討中とのことですが、瀬戸内国際芸術祭や四国遍路など、県内、四国内の面白味のある資源と研究?教育を積極的にマッチングし、全国に発信することでもブランド化していけるのではないかと思います。
長尾 2013年の瀬戸内国際芸術祭では、ボランティアなどの参加者が単位取得できる制度を設け、120名が参加し単位取得しました。来年の芸術祭では倍増を計画しています。 本学は、『地域に根ざした学生中心の大学』を標榜しています。地域をキャンパスと捉え、学生には私からも「地域に出て学んでください」と常々伝えております。芸術祭に限らずフィールドワークを取り入れた授業を積極的に実施するのはもちろん、学生から自主的な地域貢献プロジェクトを公募して、実現のための支援も行っています。
杉岡 大学のブランド化の成功例としては、近畿大学のマグロが思い浮かびます。注目度の高い一つの研究を上手く発信することで、大学の規模が広がり、優秀な学生も集まっています。 どの大学でも研究というのは地域がフィールドになると思います。香川大学の場合は瀬戸内海が強みのあるフィールドと感じます。先月、「水質は向上したが、瀬戸内海からいりこなどの海洋生物が減っている」という内容の特集番組を「四国羅針盤」で放映し、後には全国放送もいたしました。その時にも香川大学に大変お世話になりました。瀬戸内海というのは非常に豊かな研究フィールドです。科学的な視点だけではなく、芸術祭や島文化の面白味もあります。地域のフィールドを生かしたここでしかできない教育?研究を行い、県内外の高校生にも知っていただくのがいいと思います。
また、局の若い職員に聞いたところ、香川大学には防災?危機管理に関する取材に伺うことが多いとのことでした。報道機関としても重要な問題で、最も信頼を寄せています。今後も重要性はますます高まっていくと思います。