危機管理を研究?教育
司会 杉岡様にもお話しいただきました防災?危機管理に関しては高松市とも連携しています。この問題に関して、市長から大学へのご要望などはありますか。
大西 近いうちに必ず起こるとされている南海トラフ大地震が発生した時、香川県は、地域の住民を守るとともに、四国の他県の救援にあたるバックヤード拠点にもなります。被災時にどう対応すべきか、香川大学の危機管理研究センターを中心にさまざまなシミュレーションを行い、トップセミナーや講演も行っていただいております。市の危機管理部門とも常に連携を図っていただいており、感謝しています。 さらに、災害時には地域ごとの共助が重要と捉えており、44の地域コミュニティ協議会全てに自主防災組織を作りました。組織内に防災士を置くための資格取得でも香川大学のお世話になっています。今後は、自主防災組織が災害時に的確に機能するための定期的な訓練が必要になります。この訓練などでもご協力いただければと思います。
長尾 防災?危機管理につきましては、平成28年度から機構を立ち上げ、関係する文理の教員を集約して研究体をつくる計画です。また教育機関としては、防災のプロの輩出も望まれていると感じ、育成に努めています。
本学では平成25年度から、学部の枠を超えて主体的に学習する、自由参加型の特別教育プログラム「ネクストプログラム」を設置しています。その中に「防災士養成プログラム」を設け、大学の授業として防災士の資格を取れるシステムを作っています。
さらに、徳島大学と連携し、防災?危機管理の専門家の養成を目指した特別教育プログラム「四国防災?危機管理特別プログラム」を開設し、地元で活躍できる防災の専門家を育成しています。現在までに45名が資格を取り、卒業しています。南海トラフ巨大地震への備えは、本学だけではどうしようもありません。四国4県の国立大学に声かけを行い、連携して取り組んでまいります。
杉岡 地域でも、民間企業でも、大規模災害時のマニュアル作りは緊急課題です。地震に限らず、集中豪雨など、近年は今まで大きな災害がなかった地域が次々と被災しています。四国をベースにしている香川大学の研究を全国に広げて、他地域と連携しながら全国でも使えるマニュアルにする、また他地域での優れた研究を上手く取り入れるなど、横の繋がりも重要になると思います。
シーズを産業に
司会 本学では、企業や行政と連携して、研究の事業化にも取り組んでいます。産業界の代表として、大学研究の事業化についての考えをお聞かせください。
藤岡 わたくしども帝國製薬は、20年以上前から様々な寄附講座?共同研究などを通じてお手伝いさせていただいております。希少糖に関しては、その時から、研究の成果を産業として立ち上げること、また医療現場で使えるものにしていくことをお願いしておりました。専門的で有益な研究が他にも数多くありますので、同様に是非社会に役立てていただきたいと思います。
そのためには、真理の探究にかかる長い時間と、産業化に必要なスピードの、調整機能を高める必要がありそうです。両者を仲介する部署や人があれば、研究の社会的な実現がスムーズになります。さらに特許などの維持管理にも、コストと時間がかるので、そのための部署も必要かと思われます。
長尾 本学には、国内外で権利化されているシーズが300件ほどあり、社会連携?知的財産センターに専任教員を置いて管理しています。ライセンスになるまでは手間も時間もかかり、各種の申請から承認にも数年かかりますが、外部資金獲得に繋がる課題ですので、今後も積極的に研究の事業化を図っていきます。
平成25年度からは、本学の研究全体を俯瞰できる「研究戦略室」を設けて、外部人材も配置し、先導的?中核的研究を選び、研究費を重点配分しています。最近その研究の1つである、人間の指先の繊細な触覚を数値化するセルセンサーという試みが、JSTの競争的資金のプロジェクトに採択されました。
さらに現在、四国の国立5大学が連携し、「知のプラットフォーム形成事業」を行っています。「四国地区国立大学連合アドミッションセンターの設立」「e-Knowledgeを基盤とした教育の共同実施」に加え、「産学官連携イノベーション共同推進機構構築」も協働で進めております。「産学官連携イノベーション共同推進機構構築」は、徳島大学が基幹校となって四国の国立5大学の知財を集約し、シーズを企業等に売り込み、事業化の確率を上げる試みです。オール四国での連携で実績を上げられると考えております。