大学院での学びがもたらすものとは。
上田学長と大学生、社会人、起業家から大学院生になった4人のクロストーク。
大学院で学ぶという選択。
写真左から、
宮?成吾(みや せいご) 農学研究科1年
角森?愛美(つのもり えみ) 地域マネジメント研究科2年
上田?夏生(うえだ なつお) 香川大学長
久保?みどり(くぼ みどり) 創発科学研究科2年
摺田?真幸(すりた まさき) 創発科学研究科2年
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探究心を満たしたい 強い思いを胸に大学院へ
ー皆さんが大学院へ進学することを決めた理由についてお聞かせ下さい。
摺田 大学院に行くつもりはなく、就活を考えていたのですが、3、4年生時代はコロナ禍で授業がオンラインになることが多くなりました。教授と実際に会って話す機会も難しい状況の中で、学びがとても物足りなく感じました。何かが身に付いたという実感がなく、この状態で就職してどうなるんだろうと漠然とした不安を覚えたことがきっかけでした。コロナ禍でマスクをつけた状態で音声がどのように変化するのかをテーマに研究していましたが、人を集めてデータを取ることも難しく、大学院で研究を続けながら学びたいなと思い進学を決めました。
久保 20年前、社会人2年目の頃に東京で大学院を受けたのですが、転職も重なり結局行けなかった過去がありました。私は子ども向け教材を手がけているのですが、香川大の教授に監修していただきました。その教授から創発科学研究科ができると聞いて「大学院に行きたかったんですよ」と話したら「受ければいいじゃない」と。「下の子が大きくなったら受けます」と話すと「多分大きくなっても受けないよ、今しかないよ」といわれ"ああ、私は学びたいことがあったんだ“と気がつきました。
角森 銀行に入行して約10年経った頃に、同じ組織の中でいると、無意識のうちに組織の考え方が染みついて新しい考え方ってなかなかできなくなっているのではと考えはじめたことがきっかけでした。銀行自体も融資だけでなくコンサルティング強化に取り組んでおり、企業の経営者様に対して適切なコンサルティング強化に取り組んでおり、企業の経営者様に対して適切なコンサルティングができるようになりたいと思っていた頃、地域マネジメント研究科の募集があり応募しました。
宮 私は学部時代の研究をより発展させたかったという探求心からです。また、将来農家の人たちのために役立つ研究職か技術職に就きたいという希望も、大学院進学への決め手でした。
興味のある分野をより極めるための学び
ーこれまでにどのような分野を学んでいますか。
摺田 私たちが第1期生ということもあり、まず自分の興味があることをやってみようと。メディア媒体の放送技術やマイク、音声に興味があり、コロナ禍でマスクをつけている中で、マスクが音声にどのような影響を与えているのかに興味を持ち、研究していました。創発科学研究科では工学や教育学の垣根を越えて学べるので、発声方法について学んでみてはとアドバイスしてもらい、エクスペリエンスアート&デザインというユニットで芸術(ボーカル)という選択科目も取っています。
久保 子どもの頃から文字や数字に色が付いて見えていて、高校生の時、それが“共感覚”だと知りました。大学では共感覚に詳しい先生には巡り会えませんでしたが、東日本大震災をきっかけに起業し親子教室をはじめ、教材の監修を通じて香川大の先生と交流ができ、大学院で学んで研究したいと考えるようになりました。現在は子どもの運動や学習効率の上がる研究をしています。大学院で学んだことで教材も「主婦が作ったものじゃなくなったね」といわれます(笑)
角森 地域マネジメント研究科では、理論と実務の双方向で学ぶことができます。企業が抱える問題解決のソリューションを提供するのが銀行の使命ですので、「地マネ」で学んだことを実践で活かしていきたいと思っています。授業では、経営戦略、マーケティング、統計、組織行動、地域マネジメント論などを履修しました。毎週オムニバスで行政や民間企業等より多彩な講師の方が登壇される授業もありました。左脳と右脳を使って普段の思考パターンを変えて課題に取り組むデザインマネジメントの授業も非常に興味深かったです。グループディスカッションで、様々なバックグラウンドを持つ20代から60代までの幅広い年齢層の方から多様なご意見を聞けたことも大きな学びです。
宮 幼少期から野菜が大好きで農学部に進学しました。学部時は選択的に植物関連の講義を受講し、植物の生態生理などを学びました。研究ではAIを使ってイチゴ農家さんの作業を軽減するためのテーマに取り組みました。当時はAI分野のバックグラウンドがなかったため、創造工学部の友人が薦めてくれた書籍や論文で勉強しながら研究を進めました。現在は研究に打ち込みつつ、後輩への指導や投稿論文の作成を通して、意見を正確に分かりやすく伝えることを意識して過ごしています。
上田 皆さんそれぞれまず研究をしたいという姿勢が素晴らしいですね。誰かに命令されてやるのではなく、自分がやりたいことがはっきりしていて、それに向かって進んでいるということが大変よく伝わってきました。大学院の役割は2つあって、ひとつは学部で物足りなかった部分をより深め進化させること。もうひとつは仕事をする中で新たな課題、学びの必要を感じた社会人にさらに学んで頂くという大学院の使命が余すところなく伝わってきました。
大学院でしか学べない貴重な経験
ー大学院への進学を悩んでいる方へのメッセージを。
摺田 僕も迷っていた経験があるのですが、就活も経験した上で進学することが意外と大事かなと。私自身は大学院に入ってからの就活の幅がすごく増えました。
久保 論文を読んで自分の知識に繋げるというのは大学院で学んだことですね。母親という立場では子どもと一緒に勉強できるというのもいいのかなと思っています。
上田 より多くの社会人に大学院で学んでもらえるよう、仕事と両立できるような仕組みも考えています。オンライン授業然り、オンデマンドを活用すれば都合の良い時間に集中して学ぶことが出来ます。就活については創造工学部や農学部では修士課程まで進む人が多数います。6年間学んだ知識や技術を企業は歓迎してくれる。一方文系については今後の日本の社会全体が変わっていく必要があると感じます。大学の使命として社会のリーダーを育成するための高等教育があります。今後は社会のあらゆる分野で多くの人が大学院で学んだ経験を有することが日本にとって望ましいですね。
角森 社会人にとっては会社のバックアップや職場の方達の理解と協力があって学べるので環境づくりも大切ですね。
専門性の高いスペシャリストの育成を目指す
ー4月に創発科学研究科の博士後期課程が新設されますが。
上田 修士課程を修了した方がさらに研究できる課程です。その道を究める専門性の高いスペシャリストを育成することが重要です。修士課程にとっても博士後期課程の先輩がいる屋根瓦式は層が厚くなりよい影響があると思います。大学院に望むことはありますか?
宮 研究科の垣根を越えて他分野の院生のプレゼンや研究発表を聞く講義があれば、自分の研究に取り入れられる要素が見つかるかもしれませんね。
摺田 別々のキャンパスにいる人たちがどんな研究をしているのか知る機会が欲しいですね。
上田 学内でミニ学会とか個別にホームページにアップして見られるようにしても面白いですね。興味がある研究をしている人にアポも取れるような。
角森 大学院生と地元企業による知識と情報の交流の場を設け、お互いが高め合い、成長できれば良いと思います。
久保 社会人から院生になった場合、博士課程に進むための詳しい情報提供を希望したい。
上田 貴重な意見や提言をありがとうございます。今後の参考にさせていただきます。